テレビの画質向上はどこ吹く風

シャープが8K相当の高画質4Kテレビを売り出すと発表した。大型家電量販店にズラリと並んでいる4Kテレビを眺めていると、流石にどのメーカーの製品も遜色のない画質のテレビが並んでいる。しかも、画面が大型化しているので、その美しさには思わず見惚れさせられる。

昔、まだブラウン管受像機の時代に、日立が黄金回路と銘打って、色の三原色を、独自に開発した新技術で電子的に配合して画質を上げたとのCMが何回も流れたことがある。日本国民は高度技術という言葉に限りない信頼を寄せる国民性がある。初めて聞く黄金回路という言葉に魅せられた。一方、同時に新製品を発表したソニーは、技術のギの字も使わない宣伝に出た。”蛸の赤ちゃん”とのナレーションが出て、蛸が産卵して小さな泡のように水中に舞い上がるシーンだけのCMだった。「貴方のテレビで、この小さな卵が湧き出るのが見えますか」と問いかけたのである。日立は技術というハードからの攻めであり、ソニーは細部を再現する場面というソフト面からのアプローチであった。

メーカーに勤めていた我が社で、この宣伝法の違いが話題になった。肉屋さんの店先には必ずと言って良いほど牛肉の部位を示す牛の絵が掲げられていて、肩ロースとか、リブロース、サーロイン、ヒレなどの部位が示されている。この看板を見て客に肉を買わせる宣伝効果があるか?買う気にさせるためには、店先で肉を焼いて、その匂いを嗅がせるのが手っ取り早い。部位の説明という技術的解析のハードより、焼肉の煙と匂いというソフトの方が有効ではないかという議論である。東京支社に勤務していて、仕事が終わって帰路につく時、JR神田駅西口の飲み屋街から出る焼き鳥の煙と匂いを掻い潜って帰る忍耐力を身につけた我々営業マンの意見であった。

今、家電量販店で見比べるテレビは、いずれも”蛸の赤ちゃん”のように、高精度・高画質の競い合いである。この技術力は4Kから8K、いずれは16Kから32Kと、まるでパソコンの容量が飛躍的に上がったように、今後共各メーカーは凌ぎを削ることになる。

現段階では、8Kテレビは高級乗用車に匹敵する値段である。しかし、これだけ投資をし、これだけ各メーカーが技術力を競い合ったテレビで見るべき価値のある番組はあるか。どの局も、お笑いタレントがスタジオでふざけて遊んでいる番組や、一般家庭では手が届かない食材を使った料理番組、タレントによるグルメの店舗回りばかりではないか。高画質テレビという技術を結集した製品が、その実力を発揮する番組が貧相極まりない。「兼高かおる世界の旅」のような番組こそ高画質テレビで見たかったのだが、今のテレビ局は視聴率を追うばかりで番組の質には関心が向いていない。大宅壮一が言った”一億総白痴化”に各社とも貢献し競い合っているのである。

テレビ局はテレビメーカーに対しでだけでなく、己にも恥を知るべきである。





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