今日読み終わった本―「義民が駆ける」


今日読み終わった本:

『義民が駆ける』 藤沢周平 中公文庫 1980年3月刊

天保時代に羽州荘内領(現、山形県)で起こった義民一揆の模様を描いた歴史小説である。天保時代は天候不良による飢饉で、各地で百姓一揆が勃発した時代であるが、本書の主題である百姓の行動は飢饉による領内の暴動ではなく、幕府の命令により領主が隣国に転封(現代で言う“転勤”)されることによる反対運動である。

発端は財政逼迫の川越藩が、藩主の生母が大奥で将軍の側室という係累を利用して、閨房政治で年貢も安定し石高も多い荘内藩へ移封を策略した。幕府は両藩の交換では理由付けが出来ないため、その間に長岡藩を介在させて三方国替えを謀る。荘内藩は代々酒井家の善政により農民の信頼と支持が厚く、「百姓といえども二君に仕えず」と国替えに反抗して、多数の農民が雪深い極寒の峻険な山々を越えて江戸へ波状的に押しかけ、幕閣達に駕籠訴で強訴、ついに将軍裁可を覆して藩主を守り抜いた。

農民の動きを縦糸としたストーリーの背景に、大義名分のない将軍令の体面を守るための老中と反主流派の幕閣の内部抗争が横糸として織り成して、物語全体を膨らませている。最後には老中が息をかけた筈の江戸町奉行が、裁きの中立を守って逆転判決し、大奥政治を明るみに出して終わっている。

歴史にも残る義民一揆の実話であるが、この小説は、百姓が藩主を守るという美談ではなく、自分達の生活を守るためだったと位置付けている。

ただ、「惧れながら」と訴える駕籠訴は死刑を伴う重罪とされていた筈だが、この物語では各幕僚が簡単に受理し、訴えに同情を示したという不可解な点もあった。




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