土に還るプラスチック

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上掲の写真は、「生分解性プラスチック」で作られたルーペである。本日の毎日新聞第一面に「“生分解性”普及に50億円、環境省方針低コスト化補助」と大々的に報じられた素材を材料に、この画期的な素材のPRのための宣伝用として作られたもので売り物ではない。但し、私の手許に入って既に25年になる。

私が勤務していた企業は歴史が古く、本業の三本柱の製品群でメシを喰っていたが、他に商売を度外視して技術者を遊ばせて自由な製品開発をする分野があった。その中から、液晶画面に硬筆で文字を書く技術から、今でこそやっと日の目を見始めているヴァーチュアル・リアリティ(VR)画像を眺めるヘッドマウント・ディスプレイ、自動車の速度計など各種メーターをフロント・ガラスに投影するヘッドアップ・ディスプレイなど、魅力的な技術開発を手がけていた。生分解性プラスチックもその一つである。

ただ、着想は良いが事業化が下手という評判も得ていて、どれ一つ企業の利益に貢献する製品が出なかった。大正時代には、日本で始めて扇風機も作っている。

生分解性プラスチックは、本業の製品群とは全く異なる分野だった。工業製品でなく、素材分野だったのである。従来の石油由来のプラスチックと異なり、サトウキビやトウモロコシなど植物を原料としているため、“土に還る”性質がある。文字通り、地球に優しい材料である。

当初は、当時は無料でふんだんに配布されていたスーパーやコンビニのレジ袋が大きな需要分野と目されていた。社内では他にどんな分野に市場があるか、自由にアイデアを出す会議に私も出たことがある。園芸の植木鉢とか医療の手術用糸、食器、今社会問題になっているストローや箸など、要するに捨てれば土に還るものなら全て対象となった。秀逸だったのは、「墓の骨壺」である。人骨は折角土に還る性質があるのに、墓の中に入れる骨壺が陶器なら土に還れないとの意見である。

ただ、事業化のためには大きな障害があった。生産コスト高で採算に合わなかったことである。PPやPEなど従来の石油由来のプラスチックが1kg \100.に対し、生分解性プラスチックは当時で1kg \800~1,000.だった。この難問が解決出来ず今日に至っていたのである。

今日の環境省方針は、この点に手を入れようというものである。是非商品化出来るよう取組んで欲しい。

ただ残念なことに、私の勤務先だった企業は、この製品の営業権を日本の大手自動車メーカーに売却してしまって、今ではなんの利益もない。この意味でも、相変わらす商売が下手なのである。








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