隠そうとしても隠せない事実



中国の天安門事件から今年で30年。中国政府はこの間、事件を矮小化し果ては歴史から抹消する努力を続けているが、昔の竹のカーテンの時代ではない。いくらネット上でブロックしても、年々増える海外への脱出組や海外の報道、SNSなどで全ての中国人は先刻承知の事実である。

事件から30年の節目に海外各紙は改めて特集を組んだが、新しく発掘された情報はない。正確な犠牲者の数は海外の専門家の分析による数字と中国政府の公式発表には2ケタ以上の差がある。その海外メディアの特集の中から、生々しい写真を集約したCNNの記事を見てみる。既に既知の光景ばかりだが、改めて事件を視覚に訴える資料である。題して、「事件の象徴的なタンク・マン写真の裏話」(こちら)。

冒頭には、ピューリッツア賞を受賞したAP通信写真記者ジェフ・ワイドナーのタンク・マン写真を掲げている。天安門広場で民主主義を叫ぶ学生を掃討する戦車列の前に、白シャツ・黒ズボン、買い物袋を手にした男が立ちはだかる有名な光景である。テレビでも放映され世界の息を呑ませた場面であるが、先頭の戦車は一旦停止した後男を避けて旋回しホッとさせた。タンク・マンと呼ばれた男も人混みの中に消え失せ、その後の消息は不明と言われる。

CNN記事は、この光景以前の天安門広場の様子を紹介する。いずれも広場を占拠した若者の行動であり、これを排除する兵士達の揉み合いの光景である。この中に兵士の排除により犠牲となった若者もいる筈である。これらの写真をもとに、その後の消息調査に使用されたと聞いている。

かくして事件の証拠写真は残っている。隠そうとしても隠せない確固たる事実である。

一方、本日の毎日新聞報道では、「安倍晋三首相が官邸で官庁幹部と面談した際に、首相官邸が議事概要などの打ち合わせ記録を一切作成していないことが明らかになった。首相の指示などが事後に検証できないブラックボックスになっている実態が一層鮮明になった」の記事が出た。戦前レジームへの回帰、つまり国民には真実を知らせない姿勢が既に実践されている。しかし、森友・加計問題で首相の関与は与党を含む国民誰もが信じている。中国国民が天安門事件を信じていながら口に出さないのと同様、日本国民も知っていて口にしなくなったのである。隠そうとして隠せない事実の中で、お互いに生きている。



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