今日読み終わった本―「死刑囚最後の日」



今日読み終わった本:

『死刑囚最後の日』 ヴィクトル・ユーゴ 小倉孝誠訳 光文社古典新訳文庫 2018年12月

このところの読書は、社会・政治問題や論説・評論の分野が多かったが、久し振りに小説を手にした。図書館の新着図書の中で目を引いたものである。書名は以前から知っていたが、ユーゴの作品は「レ・ミゼラブル」と「ノートルダム・ド・パリ」しか読んでおらず今回初めて読む機会に恵まれた。

文庫版全320ページの内、本文145ページに、「ある悲劇をめぐる喜劇」と題した対話形式の31ページの寸劇と「1832年の序文」という本文第3版の144ページの長大な序文で構成されている。本文そのものは、ユーゴの作品の中で最も短いものとされているが、実はこの3部で一つの作品としてまとめられたと見るべき作品である。

三篇の記述の底に流れているのは、ユーゴの死刑廃止への強硬な訴えである。現在のフランスはユーゴが予言した通り、既に死刑制度は廃止されているが、当時は公共の広場デギロチンによる公開死刑だった。残酷なシーンを公開して同じ悪事の再発を防ぐのが目的だった。ユーゴは死刑を見せての悪事は後を絶たず、処刑そのものは人倫にもとる行為として生涯死刑廃止を叫び続けたとある。

本編はその死刑囚の6時間後の執行と宣言された極限の時間が迫る状況の中で、内面の心的なうつろいを一人称形式で記述されたものである。冒頭の序文で「ある死刑囚が書いた不揃いの紙の束が見付かったのを編集した」とあるが、一方で「ある詩人の空想だった」ともあり、そのどちらであるか読者の想像に任せるとある。実際は後者のフクションであることは間違いない。

本編から来る重苦しい雰囲気、中編にある寸劇で上級サロンに集まった登場人物を通じて「死刑囚最後の日」の評判を語らせる内容、そして本編と同分量の長大な「1832年の序文」は死刑制度の是非を物語る濃密な内容となっている。特に「序文」には“ギロチンの刃を5回繰り返し落としても首が落ちず絶叫する死刑囚”など本編にはない生々しい光景が描かれた部分もある。

ユーゴの作品以外に60ページにわたる長文の訳者により解説も懇切丁寧で、全般的の内容の濃い文庫本であった。




ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント