安倍首相は現代の「ジャン・クリストフ」



ロマン・ロランの小説に「ジャン・クルストフ」がある。ベートーベンをモデルにしたと言われ、主人公が自分の前に次から次へ立ちはだかる困難に敢然として立ち向かい乗り切って行く姿を描いた大長編作品で、ロマン・ロランはこの作品によりノーベル文学賞を受けた。


中学卒業と同時に社会に放り出された私は、昼は会社で働き、夜は学校で勉強する勤労学生だった。「♪15 16 17と私の人生暗かった」と歌い「♪夢は夜開く」で締めくくる園まりや藤圭子は、まさに私の人生を歌っていると感じたものである。ともすれば挫折感に襲われた若い頃に、「ジャン・クリストフ」は私を勇気づけ、奮起させてくれた。


文学少年だった私は世界文学全集や日本文学全集を沢山持っていたが、身辺整理のため殆どを処分した。しかしこの本は未だに本棚に残してある。河出書房発行の箱入り菊版の重い本だが、常に持ち歩いていたものである。「人間に差があると初めて知った時は、人生の中で最も悲惨である」とか「英雄というのは自分が出来ることをする人だ」の下りは今でも覚えている。「あらゆる悩み、闘い、それに打ち勝つ自由な魂」が作品全体を貫いている。


長じて、若い頃の感動をもう一度蘇がえらせようと再読した時、当初は気が付かなかった主人公が相次いで遭遇する困難とは、実は自身の行動の中で起こした自分が蒔いた種によるものだったのである。


自分が関与し、自分が蒔いた種で苦しんでいる人は現代にもいる。他ならぬ我が国の安倍首相である。森友問題しかり加計問題しかり、今は「桜を見る会」問題で渦中にある。今までは誤魔化しとはぐらかし、言い逃れ、強弁でその場を乗り切って来たが、禍根が消え去った訳ではない。


度重なる野党の申し入れにも関わらず委員会開催を拒否して追求から逃れ、、本会議や予算委員会は弁明の場だけで国会軽視を決め込んで来て疲れが見えて来た今、「桜を見る会」問題にどう対処するか。集中砲火から逃げるために、またまた今までのように不要不急の海外訪問のタネを探っている可能性もある。