『10を聞いて1を悟る』



若い頃は、友人から文章の理解が速いと言われたことがある。自分でも密かに自負していた。本を乱読気味に読み漁っていたため、多くの文章表現に慣れていたのかも知れない。文章表現から「1を聞いて10を悟る」とまでははおこがましくて言えたものではないが、少々のクセのある表現でも理解出来たと思っている。


子供時代に珠算塾で培った高い暗算能力が最近はほぼゼロに近い程堕落したのに似て、自慢の文章理解力も地に落ちているのを自覚し焦りがある。


新聞の見出しを読んで、直ぐには理解出来なかった表現の例を挙げる。


『中国、香港高裁の覆面禁止法「違憲」を否定』。毎日新聞の見出しにあった表現である。大体、否定語が連なる二重否定が判断を狂わせる元となるがこれが三重、四重にも並ぶと頭が混乱してくる。今の私がそれである。乱読癖があったので読み飛ばして自分流に解釈する習慣が身に付いているので、ああ、これは「中国が香港の高裁判断にイチャモンをつけた意味だな」と勝手に解釈する。今回はこれが当たっていた。


別の例。『韓国、GSOMIA「終了通告の効力停止」を発表』。この表現からだけなら、韓国が失効を宣言していた刻限を前にして「宣言通りGSOMIAを停止する」と再確認したのか、「そうは言っていたが、思い直して停止しないで存続する」のどちらの意味かと迷わされる表現である。今回も「後者の意味だろう」と文章表現からではなく推測して解釈し、それが”当たり”だった。


何故こんな持って回ったような表現が必要なのか。米国ABCニュースの見出しは

『Seoul to keep Japan Military Intelligent Pact』

と極めて分かりやすい。「終了通告の効力停止」と即座には理解困難な表現は、自尊心高い韓国が一旦止めると高言した以上、取り消すのは沽券に係わると敢えて回りくどい韓国語で発表したのを日本語にしたためと思っていたが、韓国中央日報の英文紙Korea JoonAng Dailyでは

『Korea Suspends Termination of GSOMIA』

とこちらも非常に簡潔平明な表現である。


万人を対象とした新聞記事なら学術誌ではないので、文章理解力が低下した年齢層にも判り易い表現でお願いしたいものである。