「山に行く」と書置きの81才男性が遭難



「霊仙山」。随分久し振りに聞く名である。4日前の地元紙に「<山に行く>と書き置いて家を出た男性(81)が遭難した可能性があると滋賀県警が発表した。山頂付近で目撃したとの情報もある」と報じた。その翌日、「行方不明の男性を滝壺で発見、死亡を確認」の続報が出た。場所は鈴鹿山系の霊仙山である。


冬の晴れた日に、野洲川河川敷から北方向を見ると、遠くの山並みの向こうに真白に輝く山頂が見える。誰もが伊吹山が見えると感嘆の声を出すが、実はこの山が霊仙山である。伊吹山はそこから尚も左に目を転じた所に、同じように山並みの向こうに朝日に輝く真っ白な姿を覗かせている。遠くから見れば同じような山容だが、どちらかと言えば伊吹山の方がガッシリして偉容がある。


伊吹と霊仙はJR東海道線、国道26号と呼ばれる旧中山道を挟んで相対している。伊吹は海抜1377米の独立峰、霊仙は1084米で鈴鹿山脈の北端に位置している。伊吹山の方が知名度や麓に点在する駐車場の数、バス便もあるアクセスの便利さで登山者は多いが、霊仙山にはバス便はなく駐車場もない。通常はタクシー利用かマイカーで路駐するしか方法がない。


霊仙山.jpg


霊仙山は伊吹ほど険しくはなく、山頂付近のなだらかさと一面に広がる雪原のスケールの大きさで冬山登山の絶好のトレーニングの場所となっている。輪かんじきやアイゼンの使い方に慣れるのに最適である。天候に恵まれれば麓から山頂まで3時間で行ける。山頂からの眺望は遠く琵琶湖の向こうの比良山系から、間近に見える伊吹山、鈴鹿の山並みなど360度の絶景で、なかなか下山させてくれない。


遭難事故で目を引いたのは81才という男性の年齢である。私と同年で日本のマナスル登山隊が初登頂に成功し、我が国に爆発的な登山ブームが起きた時から登山を始めた世代である。それまでのズック靴からビムラム厚底の布製キャラバンシューズが大流行して登山熱に拍車をかけた。若い頃には北アルプスの岩峰を駆け回った私も、今では足腰が弱って山には入れない。その同年代の男性が、いくらなだらかとは言え千米を超す山に単独行をかける程の登山慣れと脚力に心から敬服すると共に、心底羨望の念を強くさせた。


かっては「山で死ねば本望」が山男達の合言葉だったが、今は「山で死ぬのは恥」に変わっている。しかし今回のニュースは霊仙山の思い出と山歩きが出来た贅沢な時代を想起させた。





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