ノーベル賞選考にも影?



官房長官時代、この人が首相になったらファシズム社会になるだろうなと直感的に思ったことがある。笑顔のない無表情で、「そのご指摘は当たらない」、「適正に処理している」、「コメントは差し控える」と木で鼻を括った紋切り型で明快な理由を述べたことはない。容貌も何となくナチス高官にピッタリである。言わずもがな菅現総理のことである。


その直感が邪推でもないと判り始めたのは、総理就任早々政府の意向に反したり、諫言・直言する官僚が出た場合はズバリと「異動して貰う」と言い放った時である。この時ばかりは持って回った表現でなく、結論のみ明確に述べたのには吃驚した。


今世間を驚嘆させているのは、政治とは完全に独立している日本学術会議が新会員として推薦した候補105人の内6人の任命を拒否したことである。日本学術会議とは、「学者の国会」とも言われ、人文・社会科学や生命科学、理工などの分野で国内の約90万人の学者を代表し、科学政策について政府に提言したり、科学の啓発活動をするなど高い独立性が保たれる組織で、世界各国にも「The Academy of Sciences(科学アカデミー)」として存在している。


その純学術組織である日本学術会議の推薦者の内、一部の学者の任命を今回史上初めて菅首相が拒否したことは、あからさまな学問の世界への政治介入との見方が広まっている。何故任命を拒否したかの理由は政府は明らかにしていない。ここにも「知らしむべからず」の姿勢が見える。加藤官房長官は、「個々の選考理由は人事に関することでコメントを差し控える」と言うが、政府には“選考人事”の権限はない筈でオカシナ説明である。「人事問題」と言えば何でも説明を逃げられた常套句を安易に利用したに過ぎない。


日本の科学者達を代表する日本学術会議にファッショ化した政府の関与が強まれば、世界は日本の科学界を色眼鏡で眺め、穿った見方をすればノーベル賞の選考にも影響し、今後日本から受章者が出なくなる可能性もある。飛躍した観方ではない。非民主国家で科学アカデミーに政府の息がかかった国々からはノーベル賞受賞者が出ていないことに注目すべきである。