ダンピング症候群




「ダンピング」とは海外取引に取り組む現役時代に良く聞いた言葉だったが、「ダンピング症候群」と聞いて意味が良く分からなかった。この言葉に接したのは、入院中の胃切除手術後に病室に訪れた栄養士からで、経済用語ではなく医学用語だったのである。それも、胃を切り取られた患者しか耳にすることがない特殊な言葉である。


「ダンピング症候群」の意味するところは、本来胃は食物と胃液を混ぜて粥状にし、半液体で徐々に小腸に送り出す機能を持っているが、胃を切除すると食べた食べ物が急速に、或いは直接小腸に流入するために起こる症状である。胃の全摘或いは部分摘出をした患者に起こる症状である。


私は幸いにして全摘ではなく3割は残して貰った部分摘出だが、健全な機能はなく「ダンピング症候群」に見舞われる余地が多いとの宣言を受けた。


具体的にはどんな症状が起こるかと言えば、動悸・目まい・冷や汗・全身倦怠感の他、腹痛・下痢・嘔吐などがあるらしい。食後2~3時間に手足の震えを伴うこともあると言われる。これを避けるため、食事は少しずつ良く噛んで、食べたものを口の中で粥状になる程、胃の働きを代行すること、その為に少量でも一回の食事に30分以上かけることがガイドラインと教え込まれた。そのため、食事毎にテーブルに時計を置いてラップタイムを測りながら食べている。辛いのは暫くアルコールがご法度で、今までの晩酌に慣れた夕食が味気なくなっている。焼酎の湯割りで、湯8:焼酎2に梅干しを入れる飲料でもダメかと栄養士に迫っているがまだ許可が出ない。


「ダンピング症候群」を避けるため、午前10時・午後3時・午後8時にカロリーメイトなどの栄養補強菓子、カステラやビスケット、ココアなど栄養を補強する間食を欠かさないようにも言われ、これは喜んで実施している。


幸にして、「ダンピング症候群」に現れる症状は経験したことはないが、アルコールの他、即席ラーメンや香辛料豊富なカレーなどは禁止され、毎月の栄養相談の都度解禁を懇願しているが、術後一ヶ月ではまだOKAYが出ない。食事に楽しみのない毎日である。