働き者社会に非正規雇用者を作り出した男




私の世代が現役の頃は、日本の労働者はほぼ全員が正規社員で、非正規雇用者は存在していなかった。僅かに季節労働者として、一時的に多忙となる業種、例えば年賀状のやりとりが集中する郵便局などでは、学生バイトを採用するなどの例外はあったが、その他の定期雇用者は全て正規労働者であった。その立場は労働基準法や企業の労働組合で雇用が保証され、余程の理由がない限り、解雇することは法律で禁じられていた。これが日本の働き者社会を形成していたのである。


例えば、ガソリンスタンドで働く給油者ですら、正規で安定雇用が保証されていた。全てが雇用保険、厚生年金、労災保険などの負担義務はあったが、その分将来の保障は確保され、それが豊富な年金基金をもたらしていたのである。


そんな労働環境にあっても一部の専門技能を要求される職種には、派遣労働者が存在していた。例えば、私が従事していた業種では英文タイピストや通訳で、その職種は派遣法で厳しく制限されていた。製造現場に派遣労働者を採用することは許されず、必要な場合は正規社員として採用する必要があったのである。


この安定した日本の雇用状態を大きく変えたのは小泉首相であり陰で提唱した竹中平蔵大臣であった。竹中氏は厳格に制限された派遣労働の職種を段階的に解消し、最終的には全職種に広げてしまった。これが非正規雇用者を拡げた元凶である。この頃は安定雇用を保障していた労働組合の力が弱まり、経営者は安い賃金で雇用出来る安易な採用方針に転向したのである。


派遣労働者の促進を提唱した竹中氏は、今や派遣大手のパソナの会長として大儲けしている。最初はその地位を隠して慶応大教授を肩書に、非正規社員を推奨し、日本の雇用関係を崩壊させた巨悪の存在と見ていた。同じ見方をしている専門家が竹中氏を糾弾する記事を連載している。その一例が(こちら)に詳述されている。


全ての勤労者が正規社員だった我々の時代に比べ、現在は正社員63%、非正規37%と1/3の労働者が不安定な安い給料で働かされている。