筋書き通りのドラマ




歌舞伎勧進帳で、奥州に落ち延びる義経一行が安宅の関で関守の富樫左衛門の厳しい詮議を受け、弁慶の機転で無事に関を通過する話は誰もが知っている。赤穂浪士が苦労した生活の結果、最後には吉良邸に討ち入り明け近く上野介を炭小屋で見つけ主君の怨念を晴らす話も誰もが知っている。いずれも結果を知っていて、観客は高い入場料を払って舞台や映画館に足を運ぶのである。同様に、安倍前総理が「桜」問題で告訴されながら東京地検で不起訴になることは誰もが予想していた。「出来レース」という人もある。


その理由は簡単である。過去に告訴されながら不起訴となった国会議員がゴマンといながら、最終的に起訴処分され有罪となった議員は誰もいないことである。例えば、金丸信元自民党副総裁の佐川急便から5億円の闇献金、橋本元総理の日本歯科医師会からの1億円闇献金、小渕優子元経産省大臣の3億2千万円の不正会計処理、鳩山元首相の資金管理団体から4億円の収支報告書未記載などなど。「陸山会」の4億円不正会計処理で唯一起訴されて有罪となりながら、後に無罪となった小沢一郎民主党元代表もいる。日本は何かにつけ前例が重視される。

いずれも、不記載や虚偽記載での立件には、いつの間にか動機の悪質さに加え億単位の額の規準が出来ており、今回の安倍後援会事務所の場合は3022万円の収支報告書未記載だから過去の実例に比べスケールが小さいのも影響しているようである。不正の悪質さより金額の多寡が重視されている。


日本の検察はことほど左様に政権への配慮が強い。日産のゴーン氏が日本の司法制度を問題にする由縁である。これに比べて韓国の検察は政権に対して容赦はない。歴代大統領が辞任後例外なく有罪となり刑務所で臭いメシを喰らい、中には自殺者まで出る政権に、韓国の政治家を笑う人もいるが、日本も検察が強ければ韓国と同じと言える。


今回の「桜」問題で、一部メディアや野党が安倍氏が国会で118回も虚偽発言したのを検察が触れなかったと批判するのは筋違いである。今回安倍氏が告訴されたのは政治資金収支報告書未記載問題であり、国会でのウソ発言・国会軽視とは別問題なのである。この件についても別の弁護士団体から告訴されているので、いずれなんらかの進展がある筈である。