聞かれたことに答えない社会慣習



横綱相撲という言葉がある。相撲界の頂上で君臨する横綱は常に受けて立ち、勝負をするのが本来の姿であると言う意味である。ところが最近の横綱は相手が仕掛けて来るのをガッチリ受け止めることは少なくなり、自ら相手の懐に飛び込んだり、極端な場合はヒラリと身体をかわして逃げるなどの取組みが目に付く。


同様に論戦や議論を交わす弁論の達人であるべき議員が集まる国会の場でも白熱した議論が展開される姿が消え失せた。「聞かれたことに正面から答えない」技術が定着したようで安倍前首相が導入した手法と言われる。「朝ご飯論法」という有難くない名前を頂戴している。言語表現が稚拙か乏しいため論戦を避けて身をかわして逃げざるを得ないためだが、自ら起こした不祥事が原因となっている。


一例を挙げると安倍首相はモリカケ問題解明のため野党が求めた臨時国会召集を3ヶ月もの間応ぜず、逃げ切れないと見て開催したその日に審議なしで解散してしまったことがある。これは国会議員の1/4以上が要求すれば内閣に国会開催を義務付ける憲法第53条違反として野党議員団が岡山・那覇・東京地裁に提訴した。その際、110万円の損害賠償を国に求めた。


その判決が最近相次いで下され、三か所の地裁のいずれも「憲法判断はせず」原告側の訴えを退けた。「安倍内閣は訴訟を起こした一部の原告議員に賠償請求を負う義務がない」と身をかわしてしまった。


違憲性を問われたにも関わらず「憲法判断をせず」ヒラリと体をかわして賠償責任の有無に判決を切り替えたのである。「聞かれたことに対して正面切って答えない」姿勢が政治の世界だけでなく裁判所という憲法の番人と言われる司法の世界にまで及んでいるのである。


ネットで「ご飯論法」をキーワードに検索すると、例がズラリと並びビジネスの現場にまで及んでいることが判る。自分を守るために身をかわして逃げるのは横綱だけではない。日本の社会全体に及んでいる。翻って見れば、安倍さんは結構力があって今の時代の社会に影響力を行使していたのである。