東芝と経産省の異常な蜜月



民間企業の東芝と中央官庁の経産省が結託・共謀して「物言う海外株主」の押え込みに動いたという検証報告書が公表された。経産省は産業を所管する省庁として権限に基づき民間企業と一定の情報交換をすることは当然あるが、民間企業の株主総会にまで関与するのはどうみても行き過ぎである。口うるさい『物言う株主』に圧力をかけるまで踏み込むのは誰が考えても越権行為で悪質である。報道された経産省の動きから、私が現役時代に直接見聞きした経産省の前身である通産省の当時の姿勢を思い出した。


私の当時の仕事は、所属していた企業の製品を輸出することであった。ココム(対共産圏輸出統制委員会)から派生した戦略物資の輸出の厳しい規制を受けた時代で、監督官庁は通商産業省で部署は機械情報産業局(通称機情局)だった。当時の輸出貿易は輸出貿易管理令別表第一(通称“別一”)に該当するかどうかで輸出が厳しく規制されていた。


我々の扱う製品は先端技術を駆使した分析機器・医療機器だっただけに、常に別一該当スレスレの線上にあり、製品を送り出す都度、所轄税関に説明する必要があった。税関は通産省の判断を根拠に動くので、私も東京へ出張して大元の機情局に何度か足を運び製品が別一該当でないこと説明し、製品毎に非該当である旨の包括許可を受けたものである。


ところが当時の通産省は“Notorious MITI(悪名高い通産省)”と酷評される程輸出規制に厳しく、海外からも折角の日本製品を買うことが出来ない、注文しても輸出してくれないと評判が悪く、日本企業からも「輸出増進のドライブをかけながら、実際に輸出しようとすれば規制するのは理屈に合わない。商売が出来ない」との苦情が多かった。それ程「あれはダメ、これもダメ」と締め付けが厳しかった。


我々のようなヒラ社員が霞が関に乗り込んでも中央官庁は課長クラスが応対してくれない。先方もエリートとは言えヒラ社員である。何度も面談している内に顔馴染みになり相手も本音を洩らすことがある。その中に「民間企業に厳しいのは法令違反をしないよう指導するのが我々の基本である。貿管令に違反すれば企業の存続に関わるではないか」と述べた。同業他社の担当者も「通産省も表向きは厳しいが、基本的には企業寄りの姿勢が見える」と話してくれたことがある。この姿勢が今回の東芝との蜜月関係に受け継がれているらしい。