トヨタの不正車検



交通網の発達した大都市の住民は別として、地方に住む人達には自家用車が必須である。長年京都に住む友人が息子の滋賀県への転居に伴う新築住宅を見に行った時、周囲の各住宅には最低2台以上のマイカーが置いてあると驚いて話してくれたことがある。市バスの路線はあっても一日に5回しか回って来ないなら生活の助けにならない。自家用車保有は止むを得ない自衛手段である。


そのマイカーのオーナーの頭痛の種は毎年5月に支払う高額の自動車税と定期的に受検が義務付けられている自動車検査登録制度、いわゆる車検である。私は毎回、愛車を購入したディーラーに委託しているが検査に半日以上かかる。ディーラーが受け取りに来て、検査が終われば届けてくれるサービスもあるが、片道8千円も請求されるのでいつもは自分で乗り付けている。しかし、検査が終わるまで待つ訳にはいかないし、その間買い物にも不自由するので毎回代車を頼んでいる。


普段街中を走っていると、「短時間、低額車検サービス」の民間の車検会社の看板を良く見かける。ディーラーでの法定検査内容と所要時間に慣れた人間には、咄嗟に「手抜き車検に違いない」との疑いが生まれる。しかし、最終的には地方運輸局による正式な車検証が交付されるようなので、何か合法的な検査方法があるのかも知れないとも思う。


しかし最近、「レクサス高輪で不正車検、数値改竄など565台」のニュースを見て「ヤッパリ?!」の感を受けた。芋蔓式に「ネッツトヨタの店舗でも不正車検5千台、指定取り消し」もあったとの報道も出て来た。日本の自動車産業の牽引企業であるトヨタでもこの不正である。その背景には、時間のかかる法定車検制度下で「スピード車検」を全国の販売店に促して来た経緯があると言う。


見方によっては短時間車検を望む顧客側に立った対応かも知れないが、ウラには日本の車検制度に対する痛烈な批判かも知れない。車検制度は昭和5年にタクシーやバスの安全性確保を目的に制度化され、昭和48年に軽自動車まで適用された古い制度である。以降現在まで自動車の性能技術は飛躍的に進歩している。トヨタの現代車は、時代遅れの車に対する検査を行わなくても全く問題なく走れることを証明したかったのかも知れない。