秋の夜長の晩酌の醍醐味



晩酌が出来ない夜食程味気ないものはない。一日の締め括りの晩酌には肉体的な疲れや心労を癒すえも言われぬ味わいがある。飲めない人、酒を嗜まない人の晩酌なしの夜食とは、奥さんが手腕を尽くして準備した料理も味気ないものにしてしまうと思うと気の毒になる。こんな人の晩飯は概して早く済ませると聞く。


私は毎日晩酌を欠かせない層である。例年は暑い夏の季節には湯上りにグラスが汗をかくキリリと冷えたビールが定番だったが、今年は昨年の胃の切除手術で炭酸飲料を禁止されたので、成人になってからの人生で初めてビールなしの夏となった。しかも、術後暫くはアルコール厳禁を宣言されたが、医師や栄養指導士に対する粘り強い交渉の結果、焼酎の湯割りを1:9の薄い比率から徐々に改善(この場合は勿論焼酎の比率をあげること)することで折り合った結果である。今では、3:7か4:6でこの夏を過ごしたが、いずれメーカー推奨の6:4とする目標である。


晩酌と言えば、「林間に紅葉を焚いて酒を温む」のように燗をして飲む日本酒を連想するが、私は日本酒は一滴も飲めない。中卒で就職した職場の忘年会で初めて飲まされ、しこたま飲んだ末にぶっ倒れた苦い経験があり、後に残った酒のイヤな匂いに辟易したからである。その後は、登山で汗をかいて下山してからのビアガーデンで山仲間と飲んだ冷たいビールに魅せられてもっぱらビール党であった。その後、京都河原町三条に開店したトリスバーに連れられてウィスキーを飲み始めた。


日本酒が飲めないため、焼酎もその系統にあると思って手にしなかったが、飲み始めたのは60才を過ぎて会社のOB会で先輩から薦められてからなので結構オクテである。先輩の麦焼酎に習って私も麦又は蕎麦焼酎である。ところが本当の焼酎とは芋焼酎らしく、その他は亜流だと言われていると知った。鹿児島など南九州の人達からは軽蔑すらされているらしい。ところが私には芋焼酎のあの強烈な匂いが耐えられない。しかし、飲み屋で麦と指定を忘れて注文すると芋焼酎が来るので困る。


いずれにせよ、秋の夜長の晩酌は人にやすらぎを与える風情があり、毎日の夕食の楽しみでもある。