大事な所有品の落し物


長年愛用していた歩数計を遂に失くしてしまった。中山道を歩き、東海道を歩き、数々の旧街道を歩いた時に、いつも身に付けていたものだけに思い入れが深い。他人から見れば、ツマラナイ小物だが、いろんな思い出が染み付いていて、代替品では替え難い。

ズボンのベルトに装着する一個700円程度の機械式カウンターが全盛の時代に、1,700円前後でディジタル表示の電子式が売り出されたので買ったものである。それが今では、不必要ないろんな機能が付けられたので、そんな価格レベルの製品は売っていない。たかが歩いた歩数をカウントするだけのシロモノが、2倍から3倍にも値上がりしている。止む無く、精度が落ちるかも知れないが、携帯電話に内臓されている歩数計機能で代用している。

歩数計程度を失くしたくらいでは、日常の生活に殆ど影響はない。しかし、先日ウォーキングの途中で、鍵束が落ちているのを見付けた。5~6ケの鍵が一束になっている。歩道に落ちていたので、自動車の鍵はない筈だが判らない。ただ、玄関の鍵が含まれているのはほぼ確かである。と言うことは、落とし主は家に入れないことになる。極めて大事な持ち物を落としたのである。

拾って警察の駐在所に届けようかとも思ったが、近くの駐在所までは徒歩30分位かかるし、その駐在所は多くの場合、入口に「パトロールに出ていますので、ご用の方は備え付けの電話でご連絡下さい」の札がぶら下がっている。警察官不在の場合が多いのである。

落とし主は、鍵束を失くしたことに気がつくと、警察に照会する前に、まず自分が歩いて来た道順を辿って探し歩くかも知れない。初めて歩いた人なら、徒歩30分の派出所の場所は判らない筈だし、歩き慣れた人でも30分も歩いて届けてくれる奇特な人はいないと思って警察には行かない可能性もある。落とされた鍵束を暫く見下ろしていたが、落とし主はまたやって来るだろうと思って、現場保存の状態のまま立ち去った。

落とし主はさぞ困っている筈だが、玄関ドアの合鍵は自宅の植木鉢の上とか、郵便受けに入れておくなど自衛手段を講じているのが普通である。しかし、マンションに住んでいる人はどうしているか。

道を歩いていると色んな落し物がある。手袋の片一方、自転車に載せられた幼児から落ちたらしい片一方の小さな靴などは、反対側の一方が残っていても使い物にならない。落とした人はなんとも悔しい話であるがどうしようもない。

科学がいくら発達しても、落し物や車内の忘れ物を根絶する方法はない。人間とはどこか抜けたところがある動物である。清掃工場のゴミの山から、数百万円の札束が出て来るのもこの類である。

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