「モラル崩壊」ではない官僚の接待問題



昨日の毎日新聞社説に「相次ぐ官僚の接待問題、すさまじいモラル崩壊だ」として、総務省と農水省の幹部らが利害関係者から接待を受ける不祥事で国家公務員倫理規定違反で処分を受けたことに対し、「事務方トップ級と関係業者の癒着ぶりに唖然とした」と如何にも珍しい事件のような見出しを掲げているが、我が国では今更の話ではない。


接待をして利益を受けようとするのは、「越後屋、お主もワルよのう」とニヤリと笑って、悪代官が料亭の座敷で菓子箱の底に小判を敷き詰めた手土産を受けた昔から綿々と続いている日本の文化なのである。ウィキペディアで「接待」、「賄賂」をキーワードで検索すると、接待による賄賂の授受が刑法の適用を受けるようになった明治初期の昔から、民から官への贈収賄で罰せられた例がズラリと並んでいる。


議員や官僚は「会食」が欠かせない理由を「民間との意思疎通、世間が何を考えているかの情報入手」を挙げている。これはこれで賛成出来る。民意を知らずして霞が関の閉鎖的なビルの中で考えられた政策が国民の考えや要望を反映出来る訳はない。その中で出て来たプランは机上の作品に過ぎない。


私の現役時代の「官」との接触は仕事に関係の深い税関支署の役人だった。当初の付き合いは極めてオープンで、我が社の運動場で親睦野球ゲームを定期的にやったことがある。我々の部署だけではチーム編成が出来ないので、輸出貨物の輸送や通関申告を代行する乙仲と呼ばれる通関業者の日通や近鉄・阪急などの業者との混成チームだった。いずれも税関審査官と顔馴染み同士で親睦を深める場だった。


私が勤務していた企業と税関支署は至近距離にあり、相互の近くに赤提灯の飲み屋があり、定時後に良く出くわしたことがある。大概、税関の統括審査官と呼ばれる課長クラスや部下の審査官が既に出来上がった顔付きでカウンターに座っていて、我々が後から縄暖簾を潜って入って行くと、「オイッ、この横の席が空いているから座れ」と言われ一緒に飲んだことが良くある。


こちらが気を効かせて支払いを打診しても彼らは一切応じずお互いに自腹だったが、世間の目が厳しくなるに連れ横に座り合っているのも目立つとばかり、その後は我々が後から店に入って横の席が空いていても、「悪いが離れた席に行ってくれ」と指示されるようになった。


「官」も下部組織程、倫理規定など法令順守に厳しかったのである。中央官庁も同様と思うが、上位クラスになる程ルーズになるものらしい。