入院中に読み終わった本―「聖断」



入院中に読み終わった本:

『聖断』 半藤一利 PHP文庫 2006年8月

太平洋戦争の終焉、日本の無条件降伏の日の異常事態を記述した、著者の「日本のいちばん長い日」、「原爆の落ちた日」と並ぶ三部作である。本書「聖断」には“昭和天皇と鈴木貫太郎”との副題がついているが、全編を通じた主人公は鈴木貫太郎である。

海軍士官として、日清・日露戦争の活躍に始まり、魚雷を駆使した水雷戦術を展開し、実戦に応用して成功させる下りなどは迫力ある描写である。

海軍の軍令部長時代に、東京湾沖で天皇が統裁する実戦形式の海軍特別大演習があり、天皇裕仁と四日間起居を共にした。この時の演習の説明は連合艦隊長官より鈴木がもっぱら担当し、その時の彼の謙虚な姿勢が天皇初め牧野内大臣や侍従長の心を打ち、侍従長が後任として彼を推すことになった。ここまでが、本書の物語の前半である。

天皇の侍従長となった彼が、天皇との日々の接触の中で戦争終結の思いを共にし、その後乞われて総理大臣になって、陸軍の強硬な反発の中でこの目的に向かって戦う過程を描いたのが後半で、本書のヤマ場である。兵器の物量が払底し東京大空襲に会っても反抗すれ出来ない中で、何とか無条件降伏だけは避けたいと、ソ連に調停を依頼すべく工作する過程は本書の圧巻である。この時、ソ連は既に対日開戦のハラを固めていただけに、日本の外交努力は滑稽ですらある。

二つの原爆が落とされたことが決め手となり、無条件降伏となるのであるが、従来は天皇の意思による聖断とされていたが、実際は天皇の姿勢は最後まで煮えきらず、鈴木総理が強引に天皇に承諾させた形になっている。

我々日本人が余り知らされていない終戦の秘話が述べられている。形の上ではノンフィクションの小説だが、戦史として広く日本人が知りおくべき資料である。







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