隣は何をする人ぞ



自宅からほんの10分程の隣町に「日本バイリーン」という会社がある。現役時代、東京出張の帰途、新幹線の右側窓から闇の中にこの会社の名前のネオンが浮かぶと、やおら膝の上の書類をアタッシュケースに収め、残っている缶ビールを飲み干して下車準備にかかる目印にしていた。下車駅の京都には約10分で到着する。


東海道新幹線は開設当時、「夢のビジネス超特急」と言われ、主な旅客は企業のトップやビジネスマンで占められていた。勢い、その沿線には企業ブランド売込みのための看板やネオンサインが新幹線の車窓から見えるように続いている。その中には、「727」の数字だけで業種の判らない看板もある。初めはボーイングの広告かと思っていた。「日本バイリーン」も業種が判らない企業の一つだった。


縁というものは不思議なもので、私が京都から転居した守山市内の自宅はその「日本バイリーン」の至近距離にある。新幹線の車窓から見慣れた社名看板が見上げる程大きく見えたことに驚いた。この企業の敷地に接して今は琵琶湖線と呼ばれる東海道本線在来線が走っている。余りに近くを走るので、新幹線から見える社名看板は在来線の車窓からはみ出して、見上げても見えない。在来線利用者にはこの会社が「日本バイリーン」であることは先刻承知で宣伝の必要がないらしい。


隣町の会社なので、我が町内にはこの企業に勤める人が数人いる。その中に懇意にしている人が管理職だったので、何を作っている会社かと聞くと「フシキフ」という返事が返って来た。どんな字かと重ねて聞くと「不織布」と書き、正しくは「フショクフ」と呼ぶらしい。繊維の一種で、普通は織物と言えば文字通り糸を織って布にするが、不織布は織らずに原材料を化学処理して布にするもので、自動車のシートなどの内装材、アパレルの布地など多方面に応用されている。


その中にいろんな医療用品もありマスクも入っていた。従来のガーゼや布地に比べて花粉や細菌の透過を阻止する機能に優れており、外科手術用のマスクにも応用されている。安倍首相が配るマスクは布製だがウィルスの透過を阻止する点については不織布製が数段優れているという。


多くの企業が在宅勤務や生産低下に追い込まれている昨今、「日本バイリーン」は休業することが許されない業種で毎日フル稼働の状況であろう。その精か、時々通りかかる同社の社員専門駐車場は常に満車で、行き交う運送トラックも活発である。


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