黒川元検事長の懲戒解雇要求は妥当か



毎日新聞と社会調査研究センターによる全国世論調査で、黒川検事長を「懲戒解雇にすべき」が52%と半数を越えた。「訓告が当然」が33%。しかし、冷静に考えて「懲戒解雇」の要求は果たして妥当だろうか。


会社の就業規則や国家・地方公務員法の懲罰規定では、訓告・戒告・譴責・減給・出勤停止・降格・諭旨退職・懲戒解雇の順に重く、「懲戒解雇」は最高の処分である。会社に重大な損失を与えたとか、殺人など刑事罰を犯したなどが対象となる。池袋で暴走死傷者事故を起こした「上級国民」がもし現役だったら該当するかも知れない。


黒川氏の場合はどうか。高級官僚といえども、勤務時間外の私的な自由行動が許される時間に賭け麻雀をしていたことである。杓子定規に言えば、賭け麻雀は確かに賭博罪に該当する。これで摘発可能かどうか、ある弁護士が「雀荘や客が賭博の罪で処罰されない理由」で解説している(こちら)。賭けるレートによるもので、市中で適用されているレートでは殆どの場合賭博罪は適用されない、一種の社会的常識になっている。今回、森法相の説明によるレートがもし本当なら市中の相場の半分以下で、常連なら失笑を買う程度である。


外出自粛が要請されている中で、いくら勤務時間外と言っても新聞記者宅に出かけたことも指摘されている。確かに国民が不自由をかこって引篭りを余儀なくされている中では糾弾に値する。しかし外出自粛は要請であり罰則規定はない。もし黒川氏にこの点を追及するとすれば、同じ自粛中に明恵夫人が大分の宇佐神宮に旅行したこと、ある議員が自粛中に国元の選挙区に帰ったことを不問にしたのと整合性が取れない。


新聞社のハイヤーで帰宅し代金を支払わなかった点も指摘されている。しかし、これも民間の取引関係にある間柄では日常茶飯事の出来事である。毎週末に公用車で別荘通いをした舛添都知事と訳が違う。


安倍首相の「桜」のように国民の税金を食い物にした訳ではない。国家や国民に被害や損失を与えた訳でもない。しかし、長年の勤務で庁内の激しい競争を勝ち抜き、検察の知識・経験を積んでナンバー2の地位を得て、検事総長の椅子に手がかかった時点で潔く辞職した。十分過ぎる程の社会的制裁を受けている。


にも拘わらず、「懲戒解雇」を叫ぶ声が多いのは、「7千万円の退職金を貰うのはケシカラン」として、これをゼロにする処分を下して留飲を下げるというサモシイ庶民感覚が無意識に働いているのではないか。退職金額は黒川氏が決めた訳ではなく、高級公務員に決められた給与規定である。



念の為付け加えるが、私は黒川氏擁護派ではない。ましてや現政権支持者ではなく、むしろその対極にいる。我々の社会は聖人君子、仙人が巣くう神仙境ではない。声高に正論を張り上げて通る社会ではない。上記のような意見は現在社会に対する諦念観の産物である。




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