国会で棒読み答弁の舞台裏



新型コロナ感染拡大に関わる緊急宣言下で、政府が民間に自粛を求めながら議員官僚は特別扱いをしているのは何も夜の会食だけではない。テレワークを推進して出勤者を70%減らすことを求めながら、官僚が「過労死ライン」を超える深夜残業問題が常態化している。主な理由は、国会運営の茶番劇の原因となっている「事前質問制」にある。


菅総理の「答弁棒読み」の悪評に代表されるように、国会では殆どの閣僚が答弁の時に下を向いてメモを読むだけである。これは自分が物覚えのために作成したのではなく、官僚が事前に作成したのを読む朗読会なのである。このメモの作成に官僚の膨大な労力が投下されており、そのための残業時間が増えているのである。


官僚がこのメモを作成するために、国会で質問する議員に、事前に何を質問するのかを聞かねばならない。議員が質問する内容を官僚に伝えるのが午後8時過ぎになり、それから官僚が答弁の原稿を書く、それを答弁する閣僚や担当省庁のOKAYを貰うまで待機する、勢い深夜まで残業が続くのである。


なぜ、こうした作業が必要なのか。委員会で答弁する首相や大臣は全知全能ではない。どんな質問でも前知識なしで答えることは出来ない。その閣僚を「丸腰」で送り出すと議員の質問に答えられずに立ち往生する。各省庁が通そうとしている法案が廃案になるリスクさえある。政策遂行のたどんなめに不可欠な作業だからである。


似たような場面が民間の株主総会でも見られる。この時は答弁は社長に限られている。従って、事前に各事業部とか担当部署に想定質問集と答弁案を作成させる。社長は総会前に事前に分厚い答弁案を読んで勉強するが、全てが頭に入らない。総会当日は、法務部の部長か担当者が社長の席の後ろにテーマを記載した付箋がハリネズミのように一杯付いた分厚い資料を抱えて待機し、質問が出ると該当するページを引っ張り出し、後ろからそっと社長に渡す。この質問想定集は私も書かされたことがあるが、各部署で担当するので全社では大変な工数となる。シャンシャン総会で質問も出ずに終わるケースが多いので壮大な無駄作業である。


国会は首相だけでなく大臣が答弁出来るので、関係閣僚がテーマに応じて事前に勉強して答える制度にすれば良い。明治・大正時代の議会はそうであったらしい。とすれば、閣僚は官僚の書いた原稿を読むだけで済まされない。自分の口で答弁することになる。今の国会でこれが出来ないのは、それだけの資質のある人物が大臣に任命されることがなく、年季をふれば誰でもなれるので、その皺寄せが今の茶番劇国会になり官僚に過度の仕事をさせているのである。その超過勤務手当が年間102億円に達しているとのデータもある。