辻久子さん死去



稀代の天才少女バイオリニストと評されたらしい辻久子さんが95才で亡くなった。「らしい」という言葉をわざわざ付けたのは、辻さんは私より丁度一回り年上で、少女時代の彼女は知らなかったからである。


しかし、私が20才前後の若い頃、京都勤労者音楽協議会(京都労音)の企画副部長をしており、辻さんとは当時の演奏会場であった弥栄会館や京都会館の楽屋で何度もお話を聞かせて貰ったことがある。京都労音は毎月100円の会費でナマのクラシック音楽が聴ける団体で、辻さんは演奏回数が一番多かった。


当時の京都労音には辻さんの他、朝比奈隆、岩淵竜太郎、外山雄三、海野義雄、中村紘子、中山悌一、友竹正則など日本を代表する錚々たるアーティストが、勤労者という畑違いの団体に積極的に何度も出演してくれたのは、当時は一部の好事家のものだったクラッシック音楽を広く日本人、勤労者に広めようとする姿勢があったと見ている。京都労音は土地柄、京都音大の桜井武夫教授の大きな支援を得ており、同教授の楽界との仲介もあった。


辻さんは当時世界を駆け巡って国際的にも大きな評価を得ており、本来なら我々とは別世界のお高く留まるべき人物だが、我々と話している時も上から目線の態度は少しもなく、むしろ関西弁のオシャベリな大阪のオバサンの印象があった。


ベートーベン・ブラームス・チャイコフスキー・メンデルスゾーンの四大バイオリン協奏曲の連続演奏という大衆迎合とも見られるプログラムを平気で実行する人で、彼女からクラシック音楽の世界に引きずり込まれた人も多いに違いない。


NHK Web の戦争体験者の証言シリーズに登場した彼女の映像が残っている(こちら)。残念ながら演奏会の場面はないが、この人の人となりが良く出ている。


私の人生経験の過程で掠めて行った有名人だった。心をこめて哀悼の意を表したい。




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